4月「1科目だけ勉強」
最初の状態
状態1「2番手高校で落ちこぼれ寸前」
S君は
- 高校偏差値60
- いわゆる2番手高校の
新3年生でした。
| 高校 偏差値 | 6学区 | 5学区 | 4学区 | 3学区 | 2学区 |
|---|---|---|---|---|---|
| 63 | 香住丘 | ||||
| 62 | |||||
| 61 | 福岡中央 | 宗像 | |||
| 60 | 筑紫 | 新宮 | 八幡 | 戸畑 | |
| 59 | |||||
| 58 | |||||
| 57 | 筑前 | 筑紫中央 | 香椎 | 北筑 | 小倉西 |
大人しく控えめで、優しい雰囲気の学生さん。
1年生の後半から勉強が理解できなくなり
- いよいよ落ちこぼれてしまう
- 大学受験が不安になった
とのことで当方に来られました。
状態2「目指せる国立大学が無い」
S君の学力は、進研模試・偏差値40前後。
- 1番簡単な国立大学まで
- 偏差値が6~8足りなくて目指せない
ことを悩んでおられました。
| S君の高校 | 進学割合 |
|---|---|
| 九州大学 | 5% |
| 準難関・金岡千広 | 3% |
| 熊本大・九工大 | 12% |
| 下位国立大学 | 60% |
| 国立大学へ出願できない | 20% |
| 合計 | 100% |
S君はとても親孝行な学生さんで
- 国立大学へ進んで
- 親の負担を軽くしたい
という気持ちが強く、志望大学を尋ねると
- 国立大学ならどこでもいい
- 1番簡単な国立大学へ進みたい
と即答してくれました。
状態3「お父様は九州大学をご希望」
控えめなS君に対し、お父様は九州大学をお望みでした。
- (S君と同じ高校偏差値)戸畑高校の
- 落ちこぼれ退学者が九州大学へ合格した
というウワサを聞いて、当方へお越しになったそうです。
勉強内容
- 「1番簡単な国立大学」を強く希望するS君
- 「九州大学」をお望みのお父様
というスタートでした。
勉強1「目標は熊本大学」
そこでまず、目標を熊本大学へ置くことにしました。
理由は
- 1番簡単な国立大学でも
- 九州2位・熊本大学でも
使う問題集が同じだからです。
| 一般 私立大学 | 偏差値50 国立大学 | 熊本大学 九州工業 | 九州大学 | |
|---|---|---|---|---|
| 偏差値 | 45 | 50 | 55 52 | 60 |
| 問題集のレベル | 標準 | 標準 | 標準 | 難関 |
そして、九州2位の熊本大学を目指しておけば、その先の九大受験にもつながるからです。
S君へ
- 勉強内容は全く変わらないので
- 志を高く持って熊本大学を目指してみよう
と言うと、快く受け入れてくれました。
そこで
- 高校の知識0から9ヶ月で
- 熊本大学へ合格できた方法
を使うことにしました。
勉強2「1科目だけ勉強」
まず、S君の得意科目である数学だけ集中的に指導。
- 九州大学の過去問を解けるようにし
- 熊本大学を「見下ろせる」状態
を作りました。
落ちこぼれ寸前のS君は弱っているので
- まず、自信をつけてもらい
- キッカケをつかんでもらおう
という作戦でした。
「数学による1点突破法」といいます。
1点突破法
- まず1科目だけ成績を伸ばし
- 伸びた1科目を手本にして、残りの科目を伸ばす

勉強3「九州大学の基礎」
目標は熊本大学ですが、基礎訓練だけは最初から九州大学レベルで行いました。
理由は
- 熊本大学を有利に受験するため
- 後の九大受験に備えるため
です。
変化
変化1「九大数学を身に着けた」
- 2番手高校で落ちこぼれて
- 1番簡単な国立大学でも目指せない
とはいえ、S君には「2番手高校の才能」があります。
| 高校 偏差値 | 6学区 | 5学区 | 4学区 | 3学区 | 2学区 |
|---|---|---|---|---|---|
| 63 | 香住丘 | ||||
| 62 | |||||
| 61 | 福岡中央 | 宗像 | |||
| 60 | 筑紫 | 新宮 | 八幡 | 戸畑 | |
| 59 | |||||
| 58 | |||||
| 57 | 筑前 | 筑紫中央 | 香椎 | 北筑 | 小倉西 |
九大数学を説明するとすぐ理解でき、自力で正解できるようになりました。
変化2「元気になった、明るくなった」
数学1科目だけとはいえ
- 九州大学の問題を理解した
という事実は、自信になったようです。
S君は控えめな学生さんですが、よく笑ってくれるようになりました。
状態2「よく勉強するようになった」
- S君が家でもよく勉強するようになった
と、お父様が嬉しそうに教えてくださいました。
私の目から見て、S君はマジメで大人しく親孝行な学生さんなので
- 家で勉強できない
という姿が想像できないのですが、お父様によると
- 明らかに家の過ごし方が変わった
とのことで、喜んでいただきました。
4月~7月「熊大対策で基礎固め」
状態
状態1「受験生になった」
数学1科目とはいえ、九大を解いた(=ゴールを見た)ことで、受験生としてのスイッチが入りました。
状態2「標準レベルでも苦しい」
しかし、まだ全体としては
- 2番手高校の落ちこぼれ
- 進研模試・偏差値40の学力
なので、熊大対策の「標準レベル問題集」でも苦しそうです。
勉強内容
勉強1「熊大対策で基礎づくり」
数学以外も勉強スタート。
- 自宅では熊大対策の標準レベル問題集を独学してもらい
- 私がマンツーマン指導で九大対策を混ぜることで
「熊大以上、九大未満」の状態を作っていきました。
勉強2「独学法の指導」

上記の学習計画表を作ってもらい
- 問題集を毎日少しずつ進めること
- 基礎の反復
を行っていただきました。
S君が高校で落ちこぼれた理由として
- 今、習っている単元は頑張れるが
- 習い終わった単元を憶えていられない
(初心者に戻ってしまう)
という傾向があったので
- 目先の成績は気にせず
- 1年間トータルの受験計画を大事にする
ことをお願いしました。
変化
変化1「熊大合格の流れに乗った」
上記の独学法を使ってもらった結果、標準レベル問題集が終わる頃には
- 冬の追込み勉強で仕上げれば
- 熊本大学へ合格できるだろう
という状態になりました。
変化2「九州大学へ行きたい」
熊本大学を射程圏に捉えた頃、今まで
- 1番簡単な国立大学
を志望していたS君が
- 九州大学に挑戦したい
とおっしゃいました。
- 指導の初期に九大数学を想像より簡単に理解できたこと
- 熊本大学に対して自信を持て始めたこと
により「さらに上を目指したい」という気持ちが湧いたようです。
- 九州2位・熊本大学の合格が見えたことで
- 他の下位国立大学が保険(=受け皿)となり
心の自由を手に入れ、2番手高校の才能が開花し始めていました。
変化3「難関問題集へスイッチ」
通常なら
- 標準レベル問題集を反復して
- 熊大対策の地固めを行う
時期ですが、勇気を出して難関問題集へスイッチしました。
- 標準レベルの地固めと
- 難関レベルへの挑戦を
同時に行うことにしました。
- 真剣に九州大学を目指すことで
- 熊本大学の合格率がさらに上がる
という計算もありました。
7月~新年2月「九大対策」
状態
状態1「時間がない」
才能は開花してきましたが、12月1日からの「共通テスト対策」まで残り5ヶ月。
- 12月1日~共通テスト本番までは
- 国立二次対策を完全に止めるので
11月30日までに、難関問題集を2周できるかが出願先の分かれ目でした。
状態2「無理しなくてよい」
九州大学を強くご希望されていたお父様が来られました。
- 先生(松本)と子供(S君)がここまで頑張ってくれるとは思いませんでした
- 親としては子供(S君)が家庭の事情のせいで「やりたい事をやりたい」と言えないことが不憫で、全力を出させてあげたいという想いから「九州大学を目指せ」と言いました
- もし本当に熊本大学へ進めるようなことがあったら親としては十分すぎるし、子供(S君)がここまで頑張ってくれるとは想像してなかったので、「絶対に九州大学」などと気負わずに、親としては子供の「人間的な成長」を喜んでいるので、必ずしも九州大学でなくとも構いません
と言っていただきました。
勉強内容
勉強1「トップ高校の3倍の基礎」
S君にはトップ高校の3倍の基礎訓練をしてもらいました。
「才能」では、学区1位の高校にどうしても及ばない部分があるので
- 難しい事はできるだけ避ける
- 誰でもできる「基礎の反復」で九大合格する
という作戦をとりました。
一般的な九大受験の場合
- 2番手高校の才能は
- トップ高校の才能に対して不利になる
形で表れますが、最初から「才能に期待しない」作戦を使えば
- 才能が必要ない上に
- S君には2番手高校の才能がある
という形で追い風になってくれます。
この心理的優位が感じられるような授業を心がけ、S君にはトップ高校の3倍の基礎を頑張ってもらいました。
勉強2「九大合格の簡略化」
S君に基礎の反復を要求する以上、私にできる事は、可能な限り合格難易度を下げることです。
- 戸畑高校の落ちこぼれ退学者でも
- 九州大学へ合格できた
「弱者の勉強法」をS君にも使っていただきました。

弱者の勉強法
1.データを収集・分析する






2.分析に沿い戦略を立てる
| 合格から逆算した計画 | |
|---|---|
| 新年3月 | 九州大学芸術工学部 合格 |
| 共テ終了後 | 九州大学に絞り込んだ対策 合格最低点の低い学科へ出願 |
| 12月~共通テスト | 九大対策を完全に止め 共通テスト1本に絞って対策 |
| 7月~11月 | 熊大の地固め+九大挑戦 トップ高校の3倍の基礎 |
| 4月~7月 | 標準レベル問題集 熊大合格の流れに乗せる 基礎だけは九大レベルで行う |
| 4月 | 九大数学を理解して自信をつける 落ちこぼれの脱出 |
| 3月 | 2番手高校で落ちこぼれ寸前 1番簡単な国立大学まで 偏差値6~8足りない |


3.戦略に沿い「弱いなりの戦い」をする




勉強3「合格最低点に特化」
- 合格最低点(+100点)
に特化した指導を行いました。
S君は
- 高校偏差値60
- いわゆる2番手高校
の学生さんなので、九大対策の難関問題集に触った経験がありません。
| 教材レベル | 主な 進学先の上限 | |
|---|---|---|
| 学区1位の高校 | 難関 | 東京大学 九州大学 |
| 2番手高校 (学区2~4位) | 標準 | 熊本大学 |
| 高校偏差値 50以下の高校 | 入門 | 下位国立大学 |
難問で勝負すると学区1位の高校に負けてしまうので
- 2番手高校の学生さんでも正解できる
- 標準問題を確実に正解して
合格最低点を超えることに特化した作戦を取りました。
一般に、九州大学といえば
- 学区1位高校の上位50%
だけが目指せると思われていますが
- 簡略化して
- 合格最低点を超えるだけなら
S君の高校や、私が落ちこぼれて退学になった戸畑高校でも可能です。

| 2023年 | 得点率 | 得点 | 戸畑高校の 落ちこぼれでも |
|---|---|---|---|
| 共通テスト | |||
| 数学ⅠA | 85% | 85 | 可能 |
| 数学ⅡB | 85% | 85 | 可能 |
| リーディング | 80% | 80 | 可能 |
| リスニング | 80% | 80 | 可能 |
| 化学 | 85% | 85 | 可能 |
| 物理 | 85% | 85 | 可能 |
| 現代文 | 70% | 70 | 可能 |
| 古文 | 40% | 20 | 可能 |
| 漢文 | 80% | 40 | 可能 |
| 地理B | 70% | 70 | 可能 |
| 小計 (共通テスト合計) | 77.8% | 700 | 2023年 九大工学部B判定 |
| 50%換算 | 350 | ||
| 九大二次試験 | |||
| 数学 | 60% | 150 | 可能 |
| 英語 | 60% | 120 | 可能 |
| 化学 | 60% | 75 | 可能 |
| 物理 | 60% | 75 | 可能 |
| 小計 | 420 | 可能 | |
| 全合計 | 67.0% | 770 | 可能 |

勉強4「九州大学に特化した指導」
九州大学には
- 出題を「予測・的中」される事など気にせず
- 九州大学が「出題したい問題」を出題し続ける
という傾向があります。

この傾向を利用し、出題されそうな分野に絞り込んだ指導を行いました。
勉強5「追込み勉強」
12月1日から九大対策を完全に止め、共通テスト1本に絞って勉強。

共通テスト終了後は
- 九大対策
- 高校3年分の総仕上げ
を行いました。
変化
変化1「悲壮な戦い」
S君の目のクマが濃くなりました。
S君は何事も表に出さない性格で、いつも穏やかに笑ってくれますが、顔つきや歩き方などに疲労が見えました。
疲労を含んだ笑顔から陰の努力が伝わってきましたが
- 目だけはギラギラしており
- 授業は食らいつくように受けてくれるので
「無理するな」と声をかける事もためらいました。
- 2番手高校からの九大受験
- 私立大学ナシ、国立大学1本の受験
- 道に死して悔いなし
という悲壮な覚悟からは、6ヶ月前の大人しいS君とは思えない変化でした。
変化2「明鏡止水」
難関レベルの難しさに慣れ、疲労が普通の事となり、ギラギラした感じが抜けてくると、S君は穏やかになりました。
- 最初の頃の弱さを含んだ穏やかさではなく
- 山頂の朝のような清々しい穏やかさ
でした。
私が標準問題を指すと確実に正解してくれ、難問を指すと
- この問題は正解できなくても合格できます
- 今の僕には正解できないので、もし不合格になったら来年身につけます
と、S君は「弱者の勉強法」を完全に理解できていました。
私の師が「受験生としての悟り」という言葉を使われましたが、S君の状態が正にそれなのだと思いました。
九州大学 合格
九州大学芸術工学部 合格
「親に負担をかけたくない」ということで、国立1本の受験でした。
そういう状況で3レベルも上(→下位国立→熊大→九大)に挑戦できるという事は、これはもう戦っただけで凄いことです。
才能はトップ高校の学生さんに及びませんが
- 志の高さ
- 計画性
- 勤勉さ
- 諦めない心
など精神的・人間的成長で補ってくれました。
心から「九州大学にふさわしい学生」になっての合格でした。




